【メガネ特集】アメカジに合う「アイウェア」おすすめブランド5選

一本の眼鏡に宿る、職人の魂

アイウェアの起源・歴史

眼鏡の歴史は、人類の視力矯正への挑戦の歴史だ。13世紀のイタリアで生まれた原始的なレンズから始まり、18世紀には金属やべっ甲を使った優雅なフレームへと進化した。しかし、現代の眼鏡産業の礎を築いたのは、19世紀後半から20世紀前半のアメリカだった。

1970年代、大量生産の波に押され、多くの老舗ブランドが姿を消す。手間のかかる製法は採算が取れず、工場は次々と閉鎖された。ヴィンテージフレームは高騰し、コピー品が市場に溢れた。

ブランド紹介

今回紹介するのは、アメカジスタイルに最高にマッチする5つのアイウェアブランドだ。すべてに共通するのは、ヴィンテージへの深い理解と、妥協なき製造哲学。

大量生産のファストファッションアイウェアとは、手に取った瞬間から違いが分かる。セルロイドの重厚感、メタルフレームの繊細な彫金、リベット一つにも理由がある作り込み、これが、本物の眼鏡だ。

ニューヨークの地下倉庫で50年眠っていたヴィンテージフレーム。1950年代のハリウッドスターが愛用したブロウライン。福井県鯖江市の職人が1年かけて仕上げるセルロイドフレーム。それぞれに物語があり、魂が宿る。

眼鏡は、顔の印象を決定づける。デニムにTシャツというシンプルなスタイルでも、一本の眼鏡が、ファッションの幅を広げてくれる。

ブランド①:JULIUS TART OPTICAL (ジュリアス タート オプティカル)

NYヴィンテージの魂を継ぐ、復刻の最高峰

ブランド詳細

拠点: アメリカ(製造は日本)

創業: 2016-2017年

特徴: 1948年、ジュリアス・タート氏がニューヨークで創業したTART OPTICALは、プラスチック製アイウェアの革命児だった。彼が世に送り出したフレームは、デザインの新鮮さでニューヨーカーのスタンダードとなり、特に「ARNEL(アーネル)」はジェームス・ディーンが愛用したことで不動の地位を築いた。

しかし1970年代、大量生産品の波に押され、ARNELは生産終了。その後、ジョニー・デップをはじめとするファッション感度の高い人々がヴィンテージARNELを愛用し、価格は高騰。安易なコピー品が市場に溢れた。

この状況を憂いたのが、タート家の一員であるリチャード・タート氏とアイウェアデザイナーのタミー・オガラ氏だ。リチャード氏はTART OPTICALの製造とマーケティングに携わり、創業者ジュリアス氏から膨大な資料とスピリットを受け継いだ唯一の人物。2017年、彼らはアーカイブを基にTART OPTICALのコレクションを再現した「JULIUS TART OPTICAL」を発表。看板モデルARNELも「AR」として復活を果たした。

現代の優れた技術と実績のある素材を使用し、ジュリアス氏の世界観を残しつつ、古き良き時代の復刻と進化を実現。

代表モデルは「AR」と「FDR」。ARはウェリントン型の定番、FDRは第32代アメリカ大統領フランクリン・デラノ・ルーズベルトのイニシャルが由来のモデルだ。幅広のテンプルと存在感のあるフォルムは、アメリカ本国での知名度が極めて高い。

HYKEやWACKO MARIAといった有名ファッションブランドとのコラボレーションも積極的に展開。古き良きデザインを遊び心あるカラーで仕上げ、現代に適応させた新しいスタイルを提案している。

JULIUS TART OPTICALは、ヴィンテージ復刻の真髄だ。リチャード・タート氏が叔父から受け継いだ資料と情熱が、一本一本に凝縮されている。ARの肉厚なフレームを手に取れば、1950年代のニューヨークが蘇る。ジェームス・ディーン、ジョニー・デップ、彼らが愛した理由が、着けた瞬間に理解できる。これは単なる眼鏡ではない、歴史への敬意だ。

ブランド②:Shady CHARACTER (シェイディ キャラクター)

タートの遺伝子とモダンデザインの融合

ブランド詳細

拠点: アメリカ(製造は日本)

創業: 2021年

特徴: 1979年、マンハッタンでアンティークショップ「The Ruby Slippers」を営んでいたLinda Rae TepperとSteven Abramsが、デッドストックで取り扱っていたTART OPTICALのARNELとFDRに魅了された。彼らはTART OPTICAL社のジュリアス・タート氏に製造を依頼し、その熱意が認められてShady CHARACTERが誕生した。

ブランド休止後、2021年に新たな体制で復活。現在展開されているJULIUS TART OPTICALやNATIVE SONSを手掛けるタミー・オガラ氏と、グラミー賞2011年ベストレコーディングパッケージ賞を受賞した経歴を持つMichael Carney氏がタッグを組み、このユニークな歴史を持つブランドを復刻した。ブランドアドバイザーとして創設者の2人も参加している。

シグネチャーモデル「ARNIE」をはじめ、70〜80年代に流行したモデルを彼らのアイディアでアレンジし復刻。また、アメリカンテイストなデザインやグラフィックからインスパイアされたオリジナルデザインラインもリリースされている。

製造は日本で唯一のセルロイドフレーム素材専門メーカーであるタキロンローランド社の素材を使用。日本の福井県鯖江のTart Opticalメーカーによって、最高品質で仕上げられている。

代表モデル「COSMO」は、コンパクトながらボリューム感のある独特なバランスで人気を集める。

Shady CHARACTERは、TART OPTICALのDNAを受け継ぎながら、現代的な感性を加えた稀有な存在だ。タミー・オガラ氏の製作陣による品質は折り紙付き。ARNELをリミックスしたARNIEは、オリジナルへのリスペクトと、新しい解釈が見事に融合している。日本製の丁寧な仕上げも素晴らしい。タートの血統を引く、もう一つの本流がここにある。

ブランド③:BJ CLASSIC COLLECTION (ビージェイ クラシック コレクション)

鯖江の職人技が生む、日本人のためのアメリカンクラシック

ブランド詳細

拠点: 福井県鯖江市

創業: 2005年

特徴: 2005年、「メガネの聖地」と呼ばれる福井県鯖江市に創業したBJ CLASSIC COLLECTIONは、世界最古のメガネメーカー「American Optical社」の企画・開発・製造を行ったスタッフが手掛ける、日本人のためのクラシカルアイウェアブランドだ。

ブランドコンセプトは明確、「流行に左右されることのない普遍的な本物志向の眼鏡」。単にクラシック・ヴィンテージスタイルのディテールを忠実に再現するだけでなく、最新の技術を駆使し、時代の流れに翻弄されることのない普遍性と、自らのアイデンティティを高める自立性を宿している。

最大の特徴は、セルロイドフレームの製作期間が約1年間という徹底したこだわりだ。鯖江で唯一「芯張り」技法を継承する職人による手作業で、一本一本が丹精込めて作り上げられる。テンプルに挟み込む芯が主役の「芯張り」は、手間と時間を惜しみなくかけた作品のような眼鏡だ。

REVIVAL EDITIONの「BROS BROW」シリーズは、American Opticalのサーモント(ブロウライン)を引き継いで製造。アイウェアに詳しい人々の間では「BJクラシックのBROWこそが真のサーモントだ」とまで言われる名作だ。

CRAFTMAN EDITIONの「芯張り」シリーズは、日本でたった一人の彫金師が作り出す最高技術を詰め込んだ最高峰のコレクション。テンプルに施された不均一な美しさが、熟練職人の細かく丁寧な装飾を物語る。

「JAZZ 46」は、ビル・エヴァンスをはじめとする多くのジャズメンに愛されたモデルを復刻。クラシックで知的な印象を与える。

BJ CLASSIC COLLECTIONは、日本製の丁寧さとアメリカンクラシックの魂が融合した奇跡だ。1年かけて作るセルロイドフレームという狂気じみたこだわり、芯張り職人の技術、そして日本人の骨格に最適化された型、すべてが完璧に計算されている。American Opticalを手掛けたスタッフが作るという血統も信頼の証。鯖江が世界に誇るアイウェアブランドだ。

ブランド④:SHURON (シュロン)

1865年創業、アメリカ最古が守る伝統の血統

ブランド詳細

拠点: サウスカロライナ州グリーンビル(製造はフロリダ州マイアミ・サンライズ)

創業: 1865年

特徴: 1865年、ニューヨーク州ジュネーヴァで創業したSHURONは、160年の歴史を持つアメリカ最古級のアイウェアメーカーだ。現在、アメリカ国内で主要なフレーム製造を続ける唯一のブランドである。

SHURONの歴史は、アメリカ眼鏡産業の歴史そのものだ。1920年代には独立系および卸売ラボの主要サプライヤーとなり、第二次世界大戦中は米軍にモバイル光学ユニットを提供。独立系ラボの救世主として、アメリカ光学産業を支え続けてきた。

1947年、副社長ジャック・ローバックが「ブロウラインフレーム」を発明する。これが「RONSIR(ロンサー)」だ。メタルとジル(セルロイド)を組み合わせた革新的なコンビネーションフレームは、取り替え可能なブリッジ、アイワイヤー、ブロウにより、完全なカスタマイズを可能にした。当時、多くのメーカーは限られたカラーとサイズしか提供していなかったが、SHURONは着用者が自分の外見を自由にカスタマイズできる革命的な方法を提供した。

このブロウラインは1950年代のスタイルを定義し、即座にベストセラーとなった。1960年代には6つのメーカーがブロウライン市場を支配し、SHURONはその中心にいた。1971年8月6日、RONWINNEフレームは1600万本目の販売を記録した。

1960年代後半、ヒッピー文化の台頭でブロウラインは一時人気を失うが、1970年代後半から1980年代初頭のアンチディスコ運動で再び脚光を浴びる。1980年代半ば、ブルース・ウィリスが人気ドラマ「こちらブルームーン探偵社」でShuron Ronsirを着用し、再びブームが訪れた。

現在もMADE IN USAにこだわり続け、フロリダ州の工場で製造される。原材料の一部は海外調達せざるを得ないが、すべての製造工程をアメリカ国内で完結させる姿勢は、創業160年の誇りだ。

SHURONは、アメリカ眼鏡産業の生きた伝説だ。1865年創業という圧倒的な歴史、ブロウラインフレームの発明者としての誇り、そしてMADE IN USAを貫く姿勢、すべてが本物のアメリカンスピリットを体現している。Ronsirを手に取れば、1950年代のアメリカが蘇る。ジェームス・ディーンが、スティーブ・マックイーンが愛した眼鏡。これこそが、スタンダードの頂点だ。

ブランド⑤:OLIVER PEOPLES (オリバー ピープルズ)

ハリウッドが愛する、西海岸のラグジュアリー

ブランド詳細

拠点: アメリカ・ロサンゼルス(多くのモデルは日本製造)

創業: 1986-1987年

代表: ラリー・レイト氏(創業者・チーフデザイナー)、デニス・レイト氏、ケニー・シュワルツ氏

特徴: 1980年代前半、ラリー・レイト、ケニー・シュワルツ、デニス・レイトの3人がロサンゼルスでアイウェアブティックの経営を考えていた。資料収集の過程で、ニューヨークのアンティーク業者から届いた小包に、50年以上前のヴィンテージフレームが入っていた。

彼らはすぐにマンハッタンの地下倉庫へ向かう。そこには1500セットを超える組立前のメガネフレームと組立工具一式が、50年間放置されていた。そして黄ばんだ1枚の紙切れに書かれていたサイン、それが「Oliver Peoples」だった。

このサインを社名とした3人は、「ヴィンテージ」をコンセプトに、1920年代から1940年代のスタイルを現代風にアレンジした全く新しいデザインを生み出す。1986年11月、西ハリウッドの中心部、サンセット大通りに念願の第一号店をオープン。1987年正式に創業した。

当時主流だったアイウェアブランドとは一線を画す高級感溢れる空間で、オプティシャンが客に最高級のサービスを提供する、このコンセプトに賛同する高級百貨店を徹底的に厳選し、販売する方式を採用。わずか10ヶ月足らずでアメリカを席巻した。

デザインソースは、ヴィンテージのみならず、ロサンゼルスのファッション、映画、アート、音楽、南カリフォルニアのライフスタイルなど多岐にわたる。この西海岸のカルチャーは、今もなおブランドのDNAに欠かせない要素だ。

最大の特徴は、多くのモデルが福井県鯖江市のルックスオティカ・グループの工場で製造されているMADE IN JAPANという点だ。チタンフレームの繊細な彫金は日本の職人技によるもので、硬く加工が難しいチタンを、OLIVER PEOPLESの繊細なデザインに仕上げている。

「ブレスロゴ」という、レンズが曇るとトレードマークが浮かび上がる技術も、ブランドが掲げるミニマルデザインの一例だ。

OLIVER PEOPLESは、ハリウッドのラグジュアリーを体現したブランドだ。ニューヨークの地下倉庫で発見されたヴィンテージフレームから始まった物語は、まさにアメリカンドリーム。ロサンゼルスの洗練されたカルチャーと、日本の職人技が融合した眼鏡は、他のどのブランドとも違う独自の世界観を持つ。ラリー・レイトがCFDAに招待された理由が、着けた瞬間に理解できる。これはファッションだ。

購入・選び方のアドバイス

サイズ選びの極意

眼鏡のサイズ選びは、フレームに記載された3つの数字から始まる。例えば「46-22-145」なら、レンズ幅46mm、ブリッジ幅22mm、テンプル長145mmを意味する。

重要なのは、レンズ幅とブリッジ幅の合計だ。これがあなたの顔幅に合っているかを確認しよう。日本人の平均的な顔幅は130〜140mm程度。欧米ブランドは広めに設計されていることが多いため、試着が必須だ。

素材の選択

セルロイド(アセテート)フレームは、重厚感と経年変化が魅力だ。セルロイドは、使い込むほどに艶が増し、独特の風合いを生む。ただし重量があるため、長時間の着用には向かない場合もある。

メタルフレームは軽量で調整が効きやすい。特にチタンフレームは、軽さと強度を兼ね備える。日本製のチタンフレームは、繊細な彫金が施され、芸術品のような美しさだ。

コンビネーションフレーム(メタル×セルロイド)は、SHURONのRonsirに代表されるブロウラインスタイル。クラシックでありながら個性的で、アメカジスタイルに最高にマッチする。

まとめ:一本の眼鏡に宿るロマン

眼鏡の歴史は、アメリカの職人魂と、それを受け継ぐ日本の技術力が交差する物語だ。

一本の眼鏡に、作り手の哲学とロマンが宿る。ヴィンテージへの深い理解、妥協なき素材選び、伝統的な製法への敬意、これらすべてが、あなたの顔を飾る一本に凝縮されている。

玄人が選ぶアイウェアで、アメカジスタイルを完成。

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