【スウェット特集】「玄人好みのスウェット」おすすめ5選

吊り編機が紡ぐ、至高の着心地

アイテム起源・歴史

スウェットシャツの起源は、1920年代のアメリカに遡る。当時、運動選手たちが着用していたウール製のトレーニングウェアは、汗を吸うと重くなり、肌にまとわりついて不快だった。この問題を解決すべく、1926年にチャンピオン社の創業者ファインブルーム兄弟が、コットン製の吸汗性に優れたシャツを開発した。これが、現代に続くスウェットシャツの始まりだ。

1930年代から40年代にかけて、スウェットシャツは急速に進化を遂げる。首元にガゼットと呼ばれるV字型の補強が施された「前Vタイプ」、それが前後に付く「両Vタイプ」、肩の縫い目を無くした「ラグランスリーブ」、肩で切り替える「セットインスリーブ」、様々なディテールが生まれ、それぞれが異なる機能性と美学を持った。

特筆すべきは、1938年にチャンピオンが開発した「リバースウィーブ」技術だ。通常は縦方向に使う生地を横方向に使用することで、洗濯による縦方向の縮みを防ぐ、この革新的な発想は、スウェットシャツの歴史を変えた。脇にガゼットを入れることで横の縮みも抑え、型崩れしにくい完璧なスウェットが誕生したのだ。

1950年代、新しい紡績機の登場により、スウェットシャツはさらに普及する。この紡績機が作る糸は、ドライで固い質感を持ち、それが生地にも反映された。このザラついた質感こそが、ヴィンテージスウェットの特徴となった。

そして現代、大量生産の高速編み機が主流となる中、和歌山県にわずかに残る旧式の「吊り編機」が、1940年代のスウェットと同じふっくらとした風合いを生み出している。1日約10メートルしか生産できない非効率な機械だが、その極めて遅い編みスピードこそが、最高の着心地を実現する。玄人が求めるスウェットは、すべてこの吊り編機から生まれる。

はじめに

スウェットシャツは、アメリカンカジュアルの中で最も「機能」と「ロマン」が融合したアイテムだ。今回紹介するのは、大量生産品とは一線を画す、玄人が唸る5つのスウェットシャツ。すべて日本の旧式吊り編機、またはアメリカの伝統的製法で作られた本物だけを厳選した。

素材は綿100パーセント、もしくはそれに近い配合。生地は肉厚で、裏起毛はふっくらと柔らかい。縫製には1950年代のユニオンスペシャルミシンを使用し、フラットシーマー仕上げで縫い目を美しく整える。ガゼット、リブの針抜き、首元の上下振りミシン、こうした細部のディテールに、作り手の哲学が宿る。

ファストファッションのスウェットとは、着た瞬間から違いが分かる。体に吸い付くようなフィット感、柔らかいのに型崩れしない不思議な強さ、そして何年着ても失われない風合い。これが、本物のスウェットシャツだ。

一度この着心地を知ってしまったら、もう戻れない。冬の相棒として、春秋の主役として、あなたのワードローブに加えてほしい、至高の5着がここにある。


アイテム紹介

アイテム①:Olde Homesteader "Extra Cotton Fleece / Crew Neck Long Sleeve"

アンダーウェアの知見が生んだ傑作

アイテム詳細

販売元/ブランド名: Olde Homesteader(オールドホームステッダー)

金額: 22,000円(税込)

素材: コットン100%、裏起毛ヘヴィウエイト

特徴: オールドホームステッダーが、アスレチックウェアのノウハウとアンダーウェアで培った知見を融合させて生み出した「EXTRA COTTON FLEECE」シリーズの一着だ。傑出した技と知識を持つ国内の職人と協力し、理想のスタイルと着心地を具現化している。裏起毛が施されたヘヴィウエイトのボディは、肉厚で温かく、柔らかな着心地が格別だ。型崩れしにくい耐久性と伸縮性を併せ持った編地は、長年の使用にも耐える。ディテールへのこだわりも素晴らしい——美しくて丈夫なネックライン、クラシックな肩周りのパターン、肘から袖リブに向かう絶妙なライン、裾リブのテンションとスタイル、そしてストレスのない縫製。サイズによって裾リブのテンションが異なり、38・40はキュッと締まったウールニットのようなスタイル、42以降はゆったりとしたスタイルと、着る人の好みに応じた選択ができる。シンプルでベーシックな一枚だが、特別な味わいを感じさせる逸品だ。

アンダーウェアブランドが本気で作ったスウェットという点が興味深い。肌に触れる部分の快適さへのこだわりが、通常のスウェットブランドとは明らかに違う。裏起毛の柔らかさは反則級。サイズによる裾リブの違いも面白く、自分好みのフィット感を選べる点が玄人心をくすぐる。日本製の丁寧な仕事が光る一着。


アイテム②:DELUXEWARE S101-00 [FLAT.SEAM PLAIN]

限界密度が生む「感動スタンダード」

アイテム詳細

販売元/ブランド名: DELUXEWARE(デラックスウエア)

金額: 19,360円(税込)

素材: 綿100%、20オンス 限界密度の極厚吊裏毛 裏起毛

特徴: デラックスウエアが追求した「本物」の究極形がこのS101だ。和歌山県の旧式吊編機により、限界最高密度で編み上げた20オンスの極厚吊裏毛を使用している。旧式吊編機の超低速度により実現したこの素材は、ドライな手触りと突出した高保温性が特徴だ。1950年代前半に市場に出回った新しい紡績機が持っていたドライで固い質感、その特徴を引き継ぎながら、さらに品質の高みを目指している。縫製には1950年代のUNION SPECIAL FLAT SEAMERを使用し、フラットシーマー仕上げで美しく仕上げる。企画者が「感動スタンダード」と呼ぶこのスウェットは、見た目だけでなく機能性や細部の作りに価値を見出す、真のスウェット愛好家のために生まれた。セットインスリーブの50年代ヘビースウェットは、単なる定番ではなく、定番の進化形だ。全7色展開で、純国産品の誇りを持つ。

20オンスという狂気の生地厚。最初に持った時の重量感に驚くが、着た瞬間にその理由が分かる。これは防寒着というより、鎧だ。極寒の冬でもこれ一枚で過ごせる保温性は圧倒的。「感動スタンダード」という言葉に嘘はない。重いが、それこそがこのスウェットの存在意義。本物を知る者だけが選ぶ、究極の一着。


アイテム③:FULLCOUNT 3741 Double V Set In Sleeve Mother Cotton

ジンバブエの茶綿が紡ぐ至福

アイテム詳細

販売元/ブランド名: FULLCOUNT(フルカウント)

金額: 公式サイトでご確認ください

素材: ジンバブエコットン100%、オリジナル吊り裏毛

特徴: 和歌山県にのみ現存する吊り編機で作られた裏毛は、1940〜50年代のアメリカのスウェットと同じく、ふっくらとした風合いと最高の着心地を持つ。1日の生産量約10メートルという非効率な機械だからこそ実現可能なこの素材を、フルカウントの代名詞であるジンバブエコットンの原綿(茶綿)を先染めして作り上げた。先染めすることで、原綿の肌触りを直接楽しむことができる贅沢な仕様だ。型は両Vセットインスリーブで、ガゼットはハメコミ両V。ユニオンスペシャルミシンによるフラットシーマー縫製、フライスにはランダム針抜きを使用、ネック周りのフライスには上下振りミシンを使用するなど、手間をかけたディテールが満載だ。至極のスウェットシャツと呼ぶにふさわしい、フルカウントの本気が詰まった一着である。

ジンバブエコットンの茶綿を先染めという、フルカウントならではの贅沢な仕様。原綿の肌触りを直接楽しめるという発想が素晴らしい。両Vガゼットのディテールは見た目にも美しく、機能性も抜群。吊り編機の柔らかさとジンバブエコットンの伸縮性が組み合わさった着心地は、もはや反則。デニムで培った経験がスウェットに活かされている。


アイテム④:WAREHOUSE & CO. Lot 401 無地

復刻の頂点が作るスタンダード

アイテム詳細

販売元/ブランド名: WAREHOUSE & CO.(ウエアハウス)

金額: 公式サイトでご確認ください

素材: コットン製吊り裏毛

特徴: ヴィンテージ復刻の最高峰、ウエアハウスが手掛けるスウェットシャツの定番モデルだ。Lot 401は、シンプルな無地のセットインスリーブスウェットで、ヴィンテージのディテールを忠実に再現している。サイズは38から44までの4サイズ展開で、洗濯後の縮みは着丈で約2〜3センチ、身幅で約3〜4センチと、天然素材ならではの変化を楽しめる。カラーバリエーションはスミクロ、ナスコン、ODグリーン、オートミール、杢グレーの5色。どれも落ち着いた色合いで、アメカジスタイルに自然に馴染む。ウエアハウスらしい、過度な装飾を排したシンプルさの中に、ヴィンテージへの深い理解と尊敬が宿る。デニムで培った復刻技術が、スウェットにも余すことなく注がれた一着だ。

ウエアハウスの安定感は絶対的。Lot 401はスウェットの基本中の基本を、最高レベルで実現している。派手さはないが、着れば分かる生地の質感、縫製の丁寧さ。5色のカラバリも絶妙で、特にナスコン(ネイビー)とODグリーンは、ミリタリーとの相性が抜群。復刻ブランドの信頼性を求めるなら、これ。


アイテム⑤:Champion リバースウィーブ® クルーネックスウェットシャツ 25FW MADE IN USA

スウェットの王様、本場の血統

アイテム詳細

販売元/ブランド名: Champion(チャンピオン)

金額: 公式サイトでご確認ください

素材: コットン90% ポリエステル10%、12.5オンス テリーフリース

特徴: 「ザ キング オブ スウェットシャツ」と評されるチャンピオンの、MADE IN USAモデルだ。1938年に開発された「REVERSE WEAVE®(リバースウィーブ®)」製法——本来縦方向に使われる生地を横方向に使用することで縦の縮みを防ぎ、両脇に「EXPANSION GUSSET(エクスパンションガゼット)」を付けることで横の縮みへの影響を少なくする。この革新的な技術は、85年以上経った今も変わらず受け継がれている。USAコットンの持つざっくりとした風合いと肉厚な生地、しっかり起毛された裏地がアメリカ製の証だ。襟ネームには1970年代モデルの「赤単タグ」を採用し、ヴィンテージファンの心をくすぐる。ノーショルダーシーム、サイドリブフラットシーマーという伝統的なディテールも健在。これこそが、スウェットシャツの原点にして頂点だ。

チャンピオンのリバースウィーブは、スウェット好きなら一度は通る道。特にMADE IN USAは別格で、アジア製とは生地の質感が全く違う。ガゼットの存在感、赤単タグの佇まい、USAコットンのざっくり感——すべてが「本物」を語る。日本製の繊細さとは対極にある、アメリカらしい無骨さと機能美。カレッジスタイルの完成形がここにある。


着こなしのワンポイント解説

スウェットシャツのサイズ選びは、ジャストかワンサイズアップの二択だ。ジャストサイズで着れば、スッキリとした現代的なシルエットになる。ワンサイズアップで着れば、リラックスしたゆとりあるスタイルが完成する。どちらを選ぶかは、その日の気分とスタイリング次第だ。

重要なのは、肩のライン。セットインスリーブの場合、肩の切り替え位置が自分の肩の位置と合っているかを確認しよう。ここがずれると、全体のシルエットが崩れる。ラグランスリーブの場合は、肩のラインを気にする必要はないが、首元から袖への流れが美しいかをチェックしたい。

洗濯は、裏起毛を守るため必ず裏返して洗濯機で洗う。乾燥機は使わず、自然乾燥が基本。吊り編機で作られたスウェットは縮みやすいため、初回の洗濯後のサイズ変化を楽しむのも一興。縮んだ後は、着用することで再び伸びていくこの変化こそが、天然素材の証。

そして、スウェットは重ね着の名脇役でもある。デニムジャケットのインナーとして、ワークジャケットの下に、コートの中にその万能性は、アメカジワードローブに欠かせない存在だ。


まとめ:すべてのスウェットに宿るロマン

スウェットシャツは、アメリカンスポーツウェアの歴史そのものだ。今回紹介した5着は、それぞれが異なるアプローチで「本物」を追求している。日本の吊り編機、アメリカの伝統製法、ヴィンテージへの深い理解、すべてに共通するのは、妥協なきモノ作りへの姿勢だ。

オールドホームステッダー、デラックスウエア、フルカウント、ウエアハウス、チャンピオン、これらのブランドが守り続けるのは、1920年代から続くスウェットシャツの魂だ。運動選手のために、労働者のために、学生のために、人々の快適さを追求してきた歴史が、一枚のスウェットに凝縮されている。

吊り編機の低速な編みスピード、ユニオンスペシャルミシンの美しい縫い目、ガゼットの機能美、リバースウィーブの革新性、これらのディテール一つ一つに、作り手の哲学とロマンが宿る。

大量生産品では決して味わえない、ふっくらとした柔らかさ、体に吸い付くようなフィット感、何年着ても失われない風合い。これが、本物のスウェットシャツだ。

冬の寒さを忘れさせてくれる温もり、春秋の主役として活躍する万能性、そして時代を超えて愛され続ける普遍性、スウェットシャツは、アメカジの完成形の一つだ。

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